http://www.nananaoto.com/
今年は5月にアルバム『Nice catch the moment !』をリリースし、ホールツアーからアリーナツアーへと規模を拡大させながら、全国でライブを行なってきたナオト・インティライミ。新曲『手紙』は先日終了したアリーナツアーでもいち早く披露されたナンバーだ。温かな思いをしたためた楽曲について、また、年末に行なわれる初のさいたまスーパーアリーナ2daysや、ライブそのものに対する思いなどをじっくり語ってもらった。

──新曲『手紙』は、9月から行なわれてきたアリーナツアーでも歌われてたんですよね。

「本当は歌う予定じゃなかったんですよ。セットリストは他の曲で準備してたんだけど、ツアーが始まる前の日にパッと思いついて、この曲をやり始めたんです。タイトルも決まってなかったけど、“やっちゃえ、やっちゃえ”って(笑)」

──アリーナツアーなのに(笑)。

「そうそう(笑)。確かレコーディングは始まってた気がする。歌入れはまだだったけどね。もちろん(音源にして)たくさんの皆さんに聴いていただけることは嬉しいけど、その前に、ライブに足を運んでくれた大事な人達にまずは届けたいっていう思いもあって。会場の大きさがどうであれ、ライブってそういう場でありたいなってことでね、ひと足先にお披露目したんです」



──ということは、曲を作ったのも最近ですか?

「ベースは数年前からあったんだけど、それをちょっとほじくり返しました。今、これなんじゃないかと思って。それから歌詞やらメロディーやらアレンジを今のフィルターに通して完成させたんです」

──胸の奥にある大切な気持ちをギュッと抱きしめるような温かさが伝わってくる歌詞ですね。

「失ってからじゃないと気付けなかった、自分の弱さとか甘さ。離れてみて分かった君の色だったり音だったりっていうのが、切ないまでに鮮明に浮かび上がってきたり聴こえてきたりっていうのかな。振り返ってはいるんだけど、それは嘆きとか後ろ向きなことではなくて、強さであるっていうことを歌えたらなと思ったんですよね」

──先ほど“今、これなんじゃないか”という言葉も出てましたが、どうしてそういった気持ちに今辿り着かれたんでしょう?

「まず季節柄、寂しい季節になってきましたよね(笑)」

──人肌恋しいと言いますかね。

「自分のムードも世間のムードも、季節柄やっぱりパッと明るくというよりこういう感じじゃないですか」

──ナオトさんの曲はいつも季節感を大事にされてますからね。前作『恋する季節』(2013年4月)も、初夏に向けてのきらめきや爽やかさを感じるものでしたし。

「うん、それはありますね」

──季節感を大事にして曲を作るのは、やっぱり四季がある日本だからでしょうか?

「あぁ、うんうん。そうかもしれないね。だってレディー・ガガの今度の新曲、アッパーだもんね(笑)。でも別に関係ないのか、全世界だから季節感とか(笑)」

──とりあえずクリスマスソングみたいなのは、共通の季節感かなと思いますけどね(笑)。

「そうだね。やっぱり街のムードみたいなものはあると思うんだよね。日本みたいな四季が感じられないところでもね。ただまぁ、そういう流れを作っておいて、いつかちゃんと裏切りたいというのはありますよ。冬にめっちゃアゲアゲのパーリーソングみたいな(笑)。で、夏にどバラードとか」

──それも楽しみにしてます(笑)。でもやっぱり、この『手紙』はこれからの季節にぴったりですから、皆さんにじっくり聴いていただきたいですね。

「アレンジっていうのも実は大きいんだよね。今回(DJ DECKSTREAMによる)リミックスも収録されてるんだけど、これがまた全然雰囲気変わるでしょう? 正直、最初は“これをリミックスするって、どうなっちゃうんだろう!?”と思ってたんだけど、結果的には激カッコ良くて! ツアー中にどこかのホテルで聴いたんだけど、かなり気持ち良くなってて、これはいい! と思った。ありがたいですよね。同じ曲なのに違う曲として楽しめる。自分もリスナーとして楽しめる仕上がりなんだよね」



──なるほど。さてちょっと最初の話に戻しますけど、結果的にこの曲に『手紙』というタイトルを付けたのは、どういう気持ちの経過があったからですか?

「一方的…なんですよね。つまりこの主人公が思ってる、叫んでる、あるいは綴っている言葉というのは、おそらく届いてないんですよ。面と向かって言葉で言っているわけでも、メールを送ってるわけでもない。返信はないんですよ。ポンポンッとやり取りできるメールやLINEの感じではなく、オールドスクールな手紙というものの、オーソドックスなあたたかみとかぬくもりを携えた感じがあるんですよね。ここには。手紙って相手に届くまでの時間もあるし、届いてから相手が読んで、また手紙を書いて送って…っていうその時間には切なさも秘められてる気がしてね。でも…、自分の気持ちを本当に伝えたいってことでもないんだよな」

──というと?

「必ずしも相手に伝えたいっていうよりは、自分の中で思いを爆発させたものをただ綴ったっていう。それを、ぬくもりを帯びる手紙のように表現したかったんですよね」

──宛先のない手紙なのかもしれないですね。で、季節の中で感じる君の色や香りや音や声が、まるで相手からの返信のように感じてしまうというか。

「あぁ、そうかもしれないですね」

──ちなみに手紙とまではいかなくても、旅先からポストカードを送ったりはされますか?

※続きは月刊Songs12月号をご覧ください。

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