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“なんぼでも言い訳は浮かぶねんけど/十年後は今と違う 自分になりたいねん”──。 泉 沙世子のニュー・シングル『カス』は、メジャー・デビュー前の葛藤──どうしたら前に進めるのか分からない、でも、歌は諦めたくない──が生々しく表現された楽曲だ。彼女自身の本質をズバッと射抜くこの曲によって、歌手・泉 沙世子の魅力は多くの人に届くことになるだろう。『カス』のライブ映像も必見です! Photo:笹原良太 Text:森 朋之

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──ニュー・シングル『カス』、本当に力がある曲だと思います。まさに満を持してのリリースですね。

「“いつか出したい”という話はしていたんですけど、かなりアクが強い曲だから(笑)、一発目とかに出すのはどうかな? ということもあって。でも、いいタイミングだと思うんですよね。デビューしてからシングルを3枚(『スクランブル』『境界線/アイリス』『手紙』)出してきたんですけど、(デビューのキッカケとなった)オーディション前とは違う焦りも感じているんですよ。だからこの曲も、さらにリアルな気持ちで歌えるんじゃないかなって」



──今現在感じている焦りっていうと…?

「デビューっていう目標もだいぶ前から立てていたし──14歳でデビューしようと思っていたので(笑)──実際にデビューが決まってからも、ホッとするとか浮き足立つこともなかったんです。でも、“そんなに甘くないな”って思うこともあって…。無制限に時間があるわけではないですからね。そんな中で『カス』を出せるのはいいことだと思うんです。思い切って自分を出してしまおうって」

──確かに、泉さん自身の思いがめちゃくちゃ生々しく描かれていますからね。この曲を書いたのはいつ頃ですか?

「21歳くらいだったかな。大学入学と同時に東京に来たんですけど、歌手を目指したいという気持ちはありつつも、最初はバイトと勉強に追われてしまった。“これがやりたかったんじゃない”と思って、歌に全部を注ぐ生活に入ったんですが、それも3〜4年続いていくうちに“どうしていいか分からない”みたいな感じになってしまったんですよ。“デビューが決まったら、あとは早いよ”って言われても、そんなの信じられないじゃないですか。今は何もないのに、本当にスタート地点に立てるんだろうか? って。どこを目指していいかもハッキリしないし、でも、頑張り続けていないと不安になるし…。あと、“続けていれば叶うよ”って言われるのもイヤだったんですよね。もちろん続けていることは大事だと思いますけど、その前の大前提として、自分が本当に向いているかどうかを客観的に判断することが必要じゃないですか。向いていないことをいくら頑張っても、絶対に叶わないと思うし」



──確かにそれはホントのことですけど、人にはなかなか言えないですよね。“向いてないからやめたほうがいいよ”って。

「だから、自分で見極めることが大事なんですよね。それも1つの才能だと思うんですけど、“自分には何ができているだろう”って判断できないと。だって、人によって言うことが全然違いますからね。“人間関係を広げて、人生経験を積んだほうがいい”って人もいるし、“とにかく路上ライブをやれ”と言う人もいるし、“1曲の名曲があれば、それでいい”って人もいて」

──自分の中で言い訳を探してしまうのも怖いですよね。『カス』の中にも“最近少し忙しいとか/今はちょっとお金がないとか/なんぼでも言い訳は浮かぶねんけど”という、ものすごく正直なフレーズがあるし。

「そうですね(笑)。そこを指摘されたこともあったんですよ。“この歌詞はどうなの?”って。でも、“それじゃないとダメだ”って思っている部分なんです、実は。他の言葉に言い換えてしまうと、聴いている人はドキッとしないだろうなって…。“お金がない”って便利な言葉じゃないですか。必要なものがあっても、“今はお金がない”って言えば言い訳になるし。“服とか買うのをやめて、本当に必要なものにお金を使えば?”ってことなんですけど(笑)、そういうことも含めて、自分に向けて歌っている感じもあって」



──なるほど。ちなみに『カス』というタイトルに対しては、反対意見はなかった?

「ありましたよ(笑)。反対意見というか、“『カス』は替えたほうがいいよね”って。私は普通に付けただけだから、逆に周りの反応に驚いちゃうんですけどね」

──特に強い気持ちを込めたわけではない…?

※続きは月刊Songs2月号をご覧ください。

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