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自分の中から生まれてくるメロディーと言葉をどこまでも表現しつつ、誰にも似ていない(でも、誰もが心から楽しめる)ポップスへと昇華させる。シングル『僕たちの不確かな前途』『薔薇とローズ』、さらに秦 基博、KREVA、横山 剣(クレイジーケンバンド)、Emi Meyerとのコラボ曲を含む、さかいゆうのニュー・アルバム『Coming Up Roses』は、個性と普遍性が絶妙のバランスで溶け合う作品に仕上がった。これぞ音楽。純度100%のポップミュージックをぜひ、じっくりと味わってほしいと思う。 Photo:秋倉康介 Text:森 朋之

──新作『Coming Up Roses』は、さかいゆうさんにしか作れないアルバムだと思います。世界のどこにもない、でも、多くの人が共感できる音楽だな、と。

「どこにも属せないですからね、僕は(笑)。昔からライブに来てくれる人もバラバラなんですよ。お客さんが5人くらいの時から、“おじさん、おばさん、高校生、同世代の男の子、友達”みたいな感じで。コミュニティーやシーンみたいなものからも離れているし、J-POPの真ん中にいるわけでもなくて…。レールから外れているような孤独感を味わってますよね」



──どの曲も、すごくポップですけどね。確かに今のJ-POPの主流とは違うテイストですけど、すごく質の高いポップスばかりだなと。

「サビはポップですからね、以前から。(現在の流行との)ズレは感じるけど、自分の好きな音楽で売れないと意味がないというか、自分がやりたい感じでやっていかないとダメだと思うんですよ。今回のアルバムに関しても、僕はこれがベストだと思っているから…僕、あんまりJ-POPを通っていないんですよね。もちろん知ってはいるんだけど、じっくり聴くってことをしていなくて。むしろ、昔の歌謡曲とかを聴いていたので」

──あとは洋楽ですよね。ソウルミュージック、R&B、ファンク…。確かにJ-POPの王道とは違うかも。

「ただ、売れ線の曲も書こうと思ったら書けるんですよ、たぶん。でも、それは自分の身体の中に入っていないし、そういうものを書いて歌うっていうのは、失礼じゃないですか。やっぱり、自分の魂のメロディーじゃないとダメなんですよね。歌詞も自分の中から出てきたものばかりだし」

──1曲目の『She left』の歌詞もめちゃくちゃ率直だなと思いました。

「女は愛を探す生き物、男は愛される生き物(“The women seeks to love/The men seeks to be loved”)って歌っていますからね。だって、そうじゃないですか。例えば王様が亡くなった時に、子どもが500人いたことが分かったとしますよね。それは王様が(女性達を)愛していたわけではなくて、愛されていただけだと思うんです。女の人にとって、愛するに値する男が見つかればそれでいいわけで。浮気や不倫みたいなことが絶えなくて、でも、純愛の素晴らしさがまことしやかに語られるのは、要するにそういうことかなって。ただ、こういう曲って1曲しか書けないですけどね(笑)」

──横山 剣さん、KREVAさん、Emi Meyerさんなど、他のミュージシャンと歌詞を共作している曲もありますが、その場合はどういうスタンスなんですか?

「気持ち的には、ギターを弾いてもらうのとある意味似ているかもしれないですね。内容については、話し合って決めますけどね。例えばKREVAさんとの『オトコFACE feat. KREVA』は、最初に僕が書いたフックがあって、それを元にクレさんと1時間くらい話し合って。“これはクレさんについて書いた曲だから、NGだったらお蔵入りです”って言いましたけどね(笑)」

──すごく対等な関係なんですね。“先輩だから”みたいな意識が全然ないというか。

「それはないですね。曲を作っている時に“違うな”と思ったら“違います”って言うし、音楽の下ではみんな平等だと思っているので。今回、一緒にやってくれた皆さんも、きっと同じように思ってるんじゃないかなぁ。キャリアが長いと伝説もどんどん生まれてくるし、影が大きくなるんですよね。でも、本人のサイズはずっと同じですから」

※続きは月刊Songs2月号をご覧ください。

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