──柴田さんにとって初のライブ・アルバム『Bill board Live 2013』は、ジャジーなサウンドとボーカルが心地良くて、大人の女性シンガー・柴田淳を十二分に体感できました。

「本当ですか？ ありがとうございます。Blue Note とBillboardは憧れのステージでしたし、そのステージに立つことの緊張感はハンパなくて。もう精一杯でしたから、私自身、このアルバムの聴き方も上手く歌えたか、歌えなかったかという部分でジャッジしてしまうので、自分では全然分からないんですよ。でも、そう言ってもらえると嬉しいですね」

──柴田さん憧れの舞台での“Blue Note & Bill board Live Tour 2013”は、昨年11月に4箇所8公演行なわれたわけですが、チケットは全公演即日完売という超プレミアムライブだっただけに、今回の『Billboard Live 2013』は見に行けなかった人達にとって嬉しいアイテムになりましたね。

「ええ。行きたかった、見たかったと思ってくださる方が多くて、とにかく音だけでも聴きたいという要望をたくさんいただいたんですよね。だから、来られなかった方達にはせめてあの時の感覚を味わうものとして、あの日はこういうライブだったんだなと楽しんで聴いてもらえたらなと思って、初めてライブの模様をCD音源にしたんですけど」

──初めての場所で初めてのライブCDという柴田 淳の貴重な記録でもありますしね。

「そうなんですよ。オリジナルCDとは歌い方も違うし、緊張感いっぱいの色々な意味でリアルすぎる音源なので、柴田淳のライブの記録として荒削りな部分も含めて楽しんでもらえたらなと。思い出として空間を切り取ったものとして聴いてほしいんです。柴田 淳が初めてこういうことに挑戦したアルバムとして、また節目的な感じのステージとして、そう捉えていただけたらなと」



──どういうふうに選曲をされたんですか？

「ライブを行なった場所は由緒正しき場所で、どのくらい歴史が深いステージなのかも知っている。しかも、私の憧れの場所でもありましたし、学生時代に客席に座りながら緊張しつつ見ていたステージだから、果たして、そこで私が歌う時にどういう選曲をすればいいんだろうかって悩みました。実はジャズ・ボーカルにも憧れていて、勉強していつかはあそこにジャズ・ボーカリストとして立ちたいなんて憧れや夢もあったんですよ。だけど、そういう勉強をする前にまさかステージに立てるチャンスをいただくとは思っていなかったので、今のこの段階でジャズを歌うわけにはいかないなと。そういう領域を侵してはいけない気がしたので、自分の楽曲であの場所に合ったアレンジでと考えました」

──最新アルバム『あなたと見た夢 君のいない朝』（2013年3月）からのナンバーを始め、柴田さんのスタンダード・ナンバーや懐かしいナンバーが披露されましたけど、中でも『ひとり歩き』は、3rdアルバム『ひとり』（2004年2月）のレコーディング以来、初めて歌ったそうですね。

「普段のホールツアーとは違った演出もしたいなと思っていたんですね。で、レコーディング以来、1回もステージで歌ったことのない曲を歌うのもプレミア感があっていいなぁと思って。それにライブで披露しても、1回ぐらいしか歌ったことのない曲を選んだりとか。『月の窓』とか…。『あなたの名前』も1回しか歌ってないんじゃないかな。『あなたの名前』はオープニング・ナンバーだったんですけど、何のチェックもないまま“♪あ～”って歌い出すので、緊張感を強いられているステージで、あの曲をトップに持ってくるのはハードルが高かったですね。結局、ライブ録音した最後の日だけ、上手く歌えたかなって（笑）」

──そこでちゃんと歌えるっていうのはさすがですね。

「いえいえいえ…（笑）。私ね、今回のツアーをやる前からずっと言っていたんですけど、“場負けしたくない”って」

──で、実際はどうだったんですか？

「どうでしょう…そこは分かりません（笑）。そういえば私、最終日のBillboard TOKYOの公演で泣いちゃったんですよ。あの公演があった11月19日って私の誕生日だったんですけど、誕生日ケーキを用意していただいて、運ばれた時に思わず涙が出てきて」

──中ジャケットにそのシーンの写真がありましたね。

「ええ。寂しい1年間だったとか、寂しい誕生日だったから嬉しかったというのもあったんだけど、涙の訳の本当のところは、この4箇所8公演の“Blue Note & Billboard Live Tour”が緊張の連続で大変だったということもあって、あの瞬間、終わったぁ～っていう安堵感が湧いてきて思わず涙が出てきちゃったんですよね」

──ライブ・アルバムだけにやはり音から臨場感が伝わってきますが、リミックスの時に何かエンジニアの方に要望を出したりしたんですか？

※続きは月刊Songs4月号をご覧ください。