http://ttre.jp/
アカペラグループ・RAG FAIRのメンバーとしてもおなじみの土屋礼央が、ソロ・プロジェクト“TTRE”の2ndアルバム『ユラユラ』をリリースした。ぶち当たった壁を乗り越え、シンガーソングライターを夢見ていた頃の気持ちに戻って作ったという本作。このユーモアたっぷりのポップセンスとみずみずしいメロディーが生み落とされるまでには、悲喜こもごものこんな日々があったそうだ──。
Photo:笹原良太 Text:山田邦子

──すごく晴れやかな、いいアルバムができましたね。聴けて良かったと心から思いました。

「ありがとうございます。ソロになって2枚目ですけど、生みの苦しみをずっと味わってました(笑)」

──いきなり雲行きが怪しくなりましたが(笑)。

「本当はソロになって毎年出す予定だったんですが、1枚目(2012年3月リリースの『humour』)を出して壁にぶち当たり、結果的には2年振りになりました」



──壁って?

「成長したい! 大きくなりたい! という思いが強すぎて、導いてくれる周りに頼りすぎちゃったところがあったんだと思います。もちろんアルバム自体は今でもとても気に入ってるのですが、その後、ふと考えてみた時に、今後自分がどうしたいのかが分からなくなってしまったという…」

──なるほど、なるほど。

「そういう壁にぶち当たってしまって、僕、NONA REEVESの西寺郷太さんに悩みを聞いてもらってたんです。そしたら、“それだけ音楽に対してしっかりした信念を持ってるんだったら、とりあえず元に戻るというか、自分のやりたいことをやり抜きゃいいんだよ”って。それでデビュー前のような、“俺はシンガーソングライターでプロになるんだ”っていう思い、そこに、今の経験も踏まえつつ戻ってみようと思えたんです。で、松任谷正隆さんの音楽専門学校に行ったりしてたんですよ。作曲の勉強をしようと思って」

──そうだったんですか!

「スケジュール的なこともあって個人レッスンのような形にはなったんですけど、発表会みたいなのはみんなと一緒に参加したりして。“お前、何を目指してんの? 俺、武道館行くから! 頑張ろうな!”みたいなことを20歳ぐらいの人に言われたりしながら(笑)」

──クラスメートですからね(笑)。

「まぁ、“思い”はあるんだけど、これだけの年月をかけて曲を書いてきているから、“これは使った”“これも使った”みたいになるじゃないですか。その中でも色んなやり方があるよっていうことを教わりたかったんです。そうやって色々学んだんですけどね、でも辿り着いたのは“元に戻った”っていう」



──戻ったと言うか、戻れたと言うか。

「これまでサービス精神で生きてきましたけど、結婚したことによって、その後の制作活動やライブなどでラブソングを作ったり歌ったりすることに対して、“望まれてないのではないか”“僕は誰のために何を歌ってるんだろう!?”ってなってしまった。考えすぎて色んなことが上手くいってなかったんです」

──そういう経緯があったなんて微塵も感じさせないアルバムになっていますよ。

「だから良かったなと思って。こういうこと、プロモーションには関係ないですけどね(笑)」

──でも、これまでとは風の通り方が違うというか、声も歌い方も違っているのは明らかなわけで。メンタルから来る影響はこんなにも大きいんだっていうのは、大事なところですよ。

「自分の詞曲を愛して信じてこの世界に行こうと思った、そこにもう1回立ち返ることができたのは本当に大きいなと。グループでもバンドでもない、ソロのプロジェクトは詞曲を信じることだよなと思ってのコレ(=本作)なので。歌も、ボイトレの先生に“もう1回ちゃんとやらせてください”と土下座しました(笑)。自分で言うのも何ですけど、ようやく“聴きやすい”んですよね(笑)」

──ようやく“聴きやすい”(笑)!

「これまでの土屋礼央感というか、アクが強い方向に強かった部分が、ちゃんと音楽を、ちゃんとこの曲を、聴かせるための歌になったというか。今までは“土屋礼央を聴いてくれ!”だったけど、ついに、この人(=自分)の歌が曲をリスペクトし始めたんですよ(笑)。ボイトレの先生にも“あなたの歌が、一番曲を愛していない”って言われて、“その通りだな”と思いましたしね。信頼しているからこそこういう言い方をしますけど、“あなたの歌が、邪魔してた”って言われて、もう(笑)」

──目の覚める思いですね(笑)。

「そういう色んなことの積み重ねがあってできたんです(笑)」



※続きは月刊Songs4月号をご覧ください。

Close