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ヨーロッパのクラシック界で“100人に1人の声を持つテノール”と絶賛されながら、喉にできた腫瘍によって声を失った、韓国人の天才オペラ歌手、ベー・チェチョル。彼の才能に惚れ込み、舞台復帰までの不屈の戦いを支え続けた、日本人音楽プロデューサー、沢田幸司。国境を越えた2人の友情を描く映画『ザ・テノール 真実の物語』で、初共演を果たした伊勢谷友介とユ・ジテ。映画監督としての顔を持ち、社会活動への関心も高い2人には、映画と音楽を通じて成し遂げたい願いがあったという。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:渥美志保



伊勢谷友介(以下、伊勢谷)「僕は映画とかアートとか、色んな表現をやっているんですが、自分で音楽を発することはやっていないんです。なぜかと言えば、小学校の音楽の歌のテストの時に、みんなの前で一発目の音をはずして大爆笑されたんですよ(笑)」




ユ・ジテ「私は大学の映画演劇学科で演出の勉強をしていた頃から、演劇の音楽には非常に関心があって。様々な音楽を聴き始めたのは、それがキッカケですね。特に好きなのはダークな音楽で、ドラムンベースのソウルテックや、マッシヴ・アタックなんかを聴いていました」

伊勢谷「いい趣味ですね。僕も聴くほうは、演歌以外はなんでも。この作品をキッカケに、最近ではオペラも聴くようになりました。でも、そういえば、高校時代の学園祭でバンドをやったことがありましたね。バンドをやっている夢を見て、パッと目が覚めた瞬間に“やろう!”と思い立って。でも楽器はできないのでシャウトするだけ(笑)。選んだ曲はベースがすごくシンプルだったので、それだけ遊びでやらせてもらいました」

ユ・ジテ「僕もベースには興味があって、少し習いましたよ。僕達、似てる部分が多いですよね。俳優でもあり、映画を撮る側でもあるし、社会貢献にも興味があるし。でも僕は歌うのは、あんまり。もちろん役柄で必要ならやりますけど」

伊勢谷「今回の映画でも、声楽の先生について練習して、ほぼ歌えるようになってましたよね」

ユ・ジテ「実際に映画の中で流れるのは、ベー・チェチョルさんの歌声なんですが、自分も全力で歌わないと表現できないと思いましたし」



伊勢谷「音楽の力を全編に感じる作品ですが、特に声を失ったベーさんが再び立ち上がる、そのストーリーの流れが音楽とリンクした時のパワーは、ものすごいものがありますよね。それもユ・ジテさんがご自身でもちゃんと歌っているから、すごくリアルに見える」

ユ・ジテ「キム・サンマン監督が音楽マニアであることは以前から知っていたんですが、今回はオペラの名曲がちりばめられていて、それを上手く組み合わせて見事にストーリーを運んでいくんです。でもリップシンク(予め用意された音声に口の動きを合わせること)が下手だと、観客の皆さんはそれに集中できないじゃないですか。だからそこはすごく努力しました。ベー・チェチョルさんの歌い方を把握するために、録音した歌声を繰り返し繰り返し聴いて。そうするうちに、映画の中で言われる“神から与えられた歌声”ということがどういうことなのか、分かるような気がしましたね」


※続きは月刊Songs10月号をご覧ください。

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