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自分のポップを追求した前作『Signed POP』から2年11か月振り。秦 基博の5thアルバム『青の光景』は、彼の中に浮かんだ青い色の景色や色や匂いを音や歌詞で具現化していった作品だ。1年間かけてじっくりと熟成させていった楽曲達は、多彩さを誇る良質のポップスばかり。シンガーとして、またソングライターとしての魅力を存分に発揮した本作に秦が込めた想いに迫った。
Photo:駒井夕香 Text:大畑幸子

──とても印象深いアルバム・タイトルですが、“青”という色をテーマとしてアルバムを制作したという感じですか?



「はい。前作の『Signed POP』のツアーが終わっていよいよ次の作品に取りかかるっていう時に漠然となんですけど、“青っぽい音”の作品を作りたいなと思ったんですよね」

──“青っぽい音”?

「ええ。それは例えば、エレピの音色だったり、歌の表情だったり…要するに音も詞曲に関しても、“青っぽい音”を表現した作品を作りたいと思ったんですよ。それは曲にもよるんですけど、音色を言葉で言うなら“揺れていたり、滲んでいたり”っていう…そんな感じですね。とはいっても最初、漠然とそういう方向でやろうと決めたんですけど、詞曲を作る上で逆にそこだけに縛られるのもイヤだったので、思いついたものからまずはとにかく形にしようと、曲作りを重ねていったんですよ。それで1曲ずつ作っていく中で“青”という色が1つのコンセプトになっていきました」

──一口に“青”と言っても、その色から連想するイメージは多いですよね。抽象的ではあるけれど、例えば爽やかさや開放感もあるけど、逆に悲しみや寂しさを感じたりしますし。

「おっしゃったみたいに“ブルー”って悲しい気持ちを表現する言葉でもあるように、今思うと今回は、“物悲しい”ってことは大事だったような気がしますね。生きていく上で必ずそういう“悲哀”ってついて回るものじゃないですか。だから表層的な部分ではなくて、深い部分まで描きたいというのがあったと思います。そのイメージが“青”という色が持っている奥行きや様々なイメージに繋がっていったんでしょうね」

──そういう意味で言うと、“青”ってポジティブなイメージとネガティブなイメージが共存している代表的な色の1つだと思うんです。本作はそこをチョイスして、様々な“青の光景”がそれぞれの楽曲のサウンド感にも、また歌詞の世界観にも表現されている。そこをフォーカスして聴いていくと、このアルバムの深さがすごく感じられました。



「曲を書いたりする時に、“景色や色や匂い”とかをイメージできるかってことはすごく大切で、むしろそれがないと曲にならないと思うんですよ。今回、“青みがかった色”をイメージしたけれど、それってこれまでにも僕の中にあったイメージだったし、そこをこのアルバムで特に突き詰めて表現したいと思ったんですね。そしてでき上がった楽曲達を見て、最後の最後にアルバム・タイトルを決めたんです。それまでは、このアルバムの世界観を上手く言い表す言葉を探し続けていて。そんな時に“光景”という言葉が浮かび、“これだ!”って思えたんですよ。このアルバムは自分の中の1つの青いフィルターを通して見えている13曲ですしね。それにアルバムに流れる“物悲しさ”や『嘘』って曲にあるような“虚実”みたいなものを描いていながら、そこに“希望”を感じられる“光”という言葉が入っているのは、バランスとしていいなと考えて。それでタイトルを『青の光景』にしたんです。自分がこのアルバムで伝えようとしているニュアンスにピッタリとハマったから」

※続きは月刊Songs2016年1月号をご覧ください。

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