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ピアノロックバンド・SHE'Sが1stフル・アルバム『プルーストと花束』を完成させた。豊かなイマジネーションとリアルな感情が共存する歌、メンバーのプレイヤビリティーが活かされたサウンドスケープ。シングル『Morning Glow』『Tonight』『Stars』など11曲が収められた本作は、このバンドの音楽的な資質、将来的なポテンシャルの高さが明確に示された充実作となった。ここから始まるSHE'Sの快進撃を心ある音楽ファンと共有したいと思う。
Photo:笹原良太 Text:森 朋之

──1stフル・アルバム『プルーストと花束』が完成しました。SHE'Sの音楽性の高さがバランス良く体感できる素晴らしいアルバムだと思います!



井上竜馬(以下、井上)「ありがとうございます。現時点で僕らが持っているものの中で、一番いい作品が作れたと思いますね」

服部栞汰(以下、服部)「今のSHE'Sのベストが出せたと思います」

木村雅人(以下、木村)「今までにミニ・アルバム3枚、シングル2枚作ってきて。その中で成長できた部分もギュッと詰め込めたんじゃないかな、と」

広瀬臣吾(以下、広瀬)「やっとメジャーの活動に慣れてきて、地に足が着いてきた感覚もあるんですよ。ライブと並行して制作も進めて、スケジュール的にもこんなに忙しいことは初めてだったんですけど、その中でしっかり頑張れたと思いますね」

──SHE'Sの幅広い音楽性が伝わってくるのも印象的です。アルバムの収録曲はどんな基準で選んだんですか?



井上「曲はいっぱいあったんですよ。その中から、僕が独断で選んだり、メンバーと一緒に演奏してみてから決めた曲もあって。あとは、アルバムのテーマに合わせて選んでいった感じですね」

──アルバムのテーマを象徴しているのが、『プルーストと花束』というタイトルですよね。

井上「そうですね。テーマを決めて、『プルースト』という曲を作って…。“プルースト効果”(嗅覚や味覚によって、過去の記憶がフラッシュバックする現象)ってあるじゃないですか。僕も昔からよく経験してたんですけど“こういうことって、科学的に証明されているのかな”と思って調べてみたら、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説が(プルースト効果という名称の)元になってることが分かって、これをテーマにしてアルバムを作ってみようと思ったんです。自分の過去を旅するように曲が書けたらいいなって」

──匂いなどのキッカケによって、過去の思い出が蘇ることって、よくあるんですか?

井上「めっちゃありますね。それを曲にすることで、より立体的になる感じもあるし」

──メンバーの皆さんも井上さんの思い出、つまり、曲の背景にあるものを共有しながら制作しているんですか?

服部「そうですね。ただ、歌詞が正式に決まるのは一番最後なんですよ」

井上「最初にメンバーに渡すのは仮歌詞ですからね。もちろん“この曲ではこういうことを伝えたい”っていうのは話しますけど」

服部「うん。例えば『グッド・ウェディング』だったら“実際にこういう経験をしたことがある”ということだったり…」

──『グッド・ウェディング』も実体験が元になってるんですか。かなり切ない思い出ですね…。



井上「そうですね(笑)」

服部「(笑)。そういうことも汲み取りながら制作して。まぁ、何となく意識してるくらいですけど」

広瀬「(井上が)言いたいことも分かるようになってきてますからね。例えば『パレードが終わる頃』の時は“軍隊みたいな感じ”って言ってたんですけど、それだけで“なるほどね”って。軍隊にも色々あるじゃないですか。日本なのか外国なのか、とか」

井上「それは曲を聴けば分かるやろ(笑)。『パレードが終わる頃』は、過去を引きずりながら歩いていた青年がいて“パレードの最後に何を残せるだろう?”というイメージで作ったんですよね。だから楽しいパレードではなくて、外国の軍歌みたいな感じにしたくて。この曲のギターは“ブライアン・メイ(イギリスのロックバンド、クイーンのギタリスト)みたいな感じで”ってリクエストしたんです」

服部「僕もクイーンは好きでずっと聴いてたので、楽しかったですね。フレーズとかチョーキングとか、かなりオマージュしてます」


※続きは月刊Songs2017年2月号をご覧ください。

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