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ザ・ブルーハーツ結成30周年を記念して制作された全6本の短編で綴った映画『ブルーハーツが聴こえる』。監督は飯塚 健、下山 天、井口 昇、清水 崇、工藤伸一、李 相日の6名で、キャストは尾野真千子、市原隼人、斎藤 工、優香、永瀬正敏、豊川悦司を始め豪華キャストが集結した今作。6本の短編の中の『ラブレター』で主演を務めた斎藤 工に、今作への思いやザ・ブルーハーツの曲の思い出エピソードなどを語ってもらった。
Photo:松井伴実 Text:奥村百恵

──今作はザ・ブルーハーツ結成30周年の2015年に持ち上がった企画だそうですが、井口監督からはどのようなオファーがあったのでしょうか?



「井口監督とは『ロボゲイシャ』や『ヌイグルマーZ』などで何度かご一緒させていただいていますし、井口作品が大好きなんです。中でも最も好きなのが『わびしゃび』で、監督自身のドキュメンタリー映画です。そしたら監督から“『わびしゃび』の焼き直しを作りたいんだけど、僕の役を演じられるのは工さんしかいないのでお願いできませんか”という熱いメールが送られてきて。それが今作『ラブレター』のオファーでした。こんなに美しいラブストーリーはないと思っていた作品だったので、“ぜひやらせてください”とお受けしました」

──斎藤さんが演じた大輔は井口監督ご本人だったんですね。



「そうです。完全に井口監督そのもの。監督とは10年近くお付き合いがあるので、動きや歩き方、走り方などの癖を自然と盗取していました。ある意味それが役作りの助けになったと思います」

──監督の演出はいかがでしたか?

「監督からの演出は特になかったのですが、面白いシーンの時は現場で声を出して笑ってらっしゃいました。すごくチャーミングで正直な方なので、終始にこやかで楽しい現場作りをしてくださるんです。だから僕も、監督をもっと喜ばせるにはどうしたらいいんだろうと考えたり。笑いのさじ加減は任せてくださっていたと思います」

──6本のオムニバス作品の中で最もコミカルでユーモアたっぷりな今作ですが、ご覧になってみていかがでしたか?

「井口さんの思い出を丁寧に焼き直した作品ではありますが、自分の昔のアルバムを見ているような感覚になりました。決して悪い意味ではなくて、何だか恥ずかしいというか(笑)。“世の中に対してまだ整えられていない自分”というのが僕の中の大輔を演じる上でのテーマだったんですけど、“他人からどう見られているか”“恥をかきたくない”という感情は時として邪魔をするので、今回はあまりブレーキをかけずに、とにかく素直に感情表現しようと試みたんです。ということはその分、僕の本音が詰まってしまっているので、“人に見せるつもりじゃなかった感情”を今作で多くの人に見られてしまうんです。それが役者の仕事でもありますが、正直少し恥ずかしい気持ちになりました(笑)」

──相棒の純太役を演じた要潤さんとのコンビネーションも見ていてとても楽しかったです。要さんとの撮影はいかがでしたか?



「要さんとは世代も一緒で、以前みうらじゅんさん原作の『親孝行プレイ』というドラマでご一緒したことがあるんです。『やっぱり猫が好き』というドラマの男性版のような感じで、安田顕さんが長男、要さんが次男、そして僕が三男で三兄弟を演じていました。その頃から要さんのコメディセンスは日本の役者の中でもトップなんじゃないかなと勝手に思っていて。あんなに容姿端麗なのに面白いって類い稀な存在ですよね。要さんが相手ならどれだけ僕がやりすぎても大丈夫だという信頼があったので、安心してお芝居することができました」

──大輔の少年時代を演じていた子役の男の子も良い味を出していて、どことなく井口監督に似ていました。


※続きは月刊Songs2017年5月号をご覧ください。

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