北村匠海 *撮り下ろし3ページ |
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──“僕”のどんなところに共感しましたか?
「他人との距離の取り方や、人に対して壁を作ってしまうところ、自分の世界で毎日過ごしていて、それで満足しているような部分に共感できました。僕も中学時代は同じようなタイプでしたし、ここまで自分と似ている役柄を演じることはめったにないことなので、すごく演じやすかったです。今作が映画初主演なのですが、役をつかみやすかったおかげで気を張らずに楽しんで撮影に参加することができました」
──中学時代は自分の世界にとじこもっているような男の子だったんですか?
「他人に興味がないわけではないのですが一人で過ごす時間が意外と居心地が良いというか。今作の“僕”は本の中に生きる世界を見出しますけど、僕自身はお芝居の現場に自分の世界を作って生きていたんです。その当時は、“DISH//”のメンバーと出会って、距離の近い友人を必要としてなかったのかもしれません」
──高校に行ってからは何か変わりましたか?
「中学生の後半から音楽活動をやり始めて、高校の3年間は中学の時よりも同級生とコミュニケーションをとるようになりました。劇中で“僕”が桜良と出会って心や世界を開いていったように、僕は音楽・メンバーと出会ったことで世界が変わったように思います。今回の役を演じたことで過去の追体験ができましたし、当時の自分を投影しているような作品になったと思います」
──『ゆとりですがなにか』や『仰げば尊し』ではどちらかと言うとテンションの高い役を演じてらっしゃったので、今のお話を聞いて意外に思いました。
「小学生の頃からあまり社交的な性格ではなかったので、テンションの高い役を演じるほうがちょっと苦労するというか。『ゆとりですがなにか』や『仰げば尊し』で演じた役は振り切ったお芝居も多かったので、楽しいと感じる瞬間ももちろんあったのですが、とにかく難しかったです。今回の作品では、“僕”が自分に似ていたおかげで“演じすぎない”という試みができたのはすごく良かったなと思います」
──“僕”の癖を自ら監督に提案されたそうですが、それは北村さんご自身の癖でもあったりしますか?
「中学生の頃は人の目を見て話さなかったり、常に机を見ていたりするような子でした。たぶん無意識にそうしてしまっていたんだと思います。それで“僕”を演じる時も、意識して相手の目を見ないで話す癖を取り入れたのですが、桜良だけは“僕”に対してグイグイと踏み込んでくるので、役との距離が縮まるにつれて意識的に彼女の目だけは見るようにして演じました」
──今回の現場で何か発見したことはありましたか?
「自分と似ているからこそ、役について探求できたのは良い経験になったなと思います。ドラマは凝縮されたスケジュールの中で撮影することも多く、撮影が進んでいく中で役作りをすることもありますけど、今作は役についてゆっくり考えることができたんです」