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BREAKERZのギタリスト・AKIHIDEのソロ・ニュー・アルバムが完成。ギターと歌、そして絵本で紡ぐ本作は、ギタリスト・AKIHIDEの枠を越え、“ジャンルはAKIHIDE”と言えるほどの超大作に。めくるめく音に乗せて繰り広げられる“機械仕掛けの遊園地”へ、さぁ、あなたも出かけましょう。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:池村季子

──5年間のソロ活動を総括する、壮大なコンセプト・アルバムが完成しましたね。



「ソロの作品は毎回構成を変えていて、自分の歌がメインのアルバムもあれば、アコースティック・ギターがメインのアルバムがあったり、“和”を表現したアルバムがあったりと、コンセプトがハッキリした作品ばかりだったんです。今回はどういうものを作ればいいのかなって考えた時に、あまり理論立てて考えずに、思い浮かぶもの全てをまとめて形にしようと思いました。その中に、“歌う”というのがまずあって。去年、Acid Black Cherryのyasuさんのアルバム(『Acid BLOOD Cherry』)に作詞で参加させていただいた時に、改めて歌詞を書く面白さを知って、文字に対する興味がこれまで以上に芽生えたんですよ。そんな流れもあって、文字を書くということをさらに掘り下げて、絵本も作りたいと思いました」

──絵本のストーリーは、どうやって書き上げていったんですか?

「まず“ブリキ”と“遊園地”が思い浮かんで、遊園地に1人残されたおばけがイメージできたので、そこからストーリーが湧いてきた感じですね。一気に書き上げたわけではなくて、1、2か月かかりました。自分が思っていた以上に、物語を書く上でのルールだったりテクニックが必要なんだなというところから始まりました。僕、村上春樹さんが好きなんですけど、村上さんの『職業としての小説家』という本に感化されつつ、締め切りギリギリまで試行錯誤しました」

──物語に沿った絵も素晴らしいです。

「もともとは数枚の挿絵を入れて小説っぽくしようと思っていたんですよ。なので、絵が10枚もなかったんですけど、物語と絵のバランスを考えて、最終的に60枚くらい描きました。“この絵を入れたいからエピソードを追加しよう”とか、“絵があるからこの説明文はいらないな”とか、絵があることで文章も変わっていって」

──描き方が独特ですよね。

「すごく手間がかかりましたね(笑)。影絵の部分はパソコンで描いたんですけど、背景は実際に絵の具で塗ったものをパソコンに取り込んで、影絵と合わせたり。キラキラ光っているページに関しては、実際にラメをふりかけた絵をカメラで撮影してデータ化するという。大変な作業でしたけど、そのおかげで人間味溢れる温かさと、機械的な冷たさという曖昧なラインが表現できたと思います」



──楽曲のほうも、アナログが持つ温かさや哀愁と、デジタルが持つ無機質感といった、2つのバランスが絶妙です。

「“Electric Wonderland”というワードが最初にあったので、電子音的なものとアコースティック・ギターを混ぜたものを作りたいなと思っていたんです。あとは、歌の入った楽曲とインストゥルメンタルの両方をバランス良く入れて、絵本のサントラ盤のようなものにしたいなと。でも、絵本と音源が完全にリンクしているわけではなくて、そこはあえて曖昧にしていて。楽曲を聴いた方、絵本を読んだ方、それぞれ自由に感じてもらって、自分なりの遊園地をイメージしてもらえればいいなと思っています」

──ちなみに遊園地といえば、AKIHIDEさんにとってどんな場所ですか?

「ちょっと哀愁を感じる場所ですね。僕、大きなテーマパークが大好きなんですけど、そういう華やかな所と同じように、小さい頃に行ったデパートの屋上にある錆びついた感じの遊園地も好きなんですよ。100円玉を入れて動くクマのヌイグルミみたいな乗り物とか、ああいう場末感がすごく好きで。今はなかなか見かけなくなりましたけど、もしかしたら根本にそのイメージがあって、今作でも物寂しさを感じさせる曲が多いのかもしれません」


※続きは月刊Songs2018年7月号をご覧ください。

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