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前作『私は幸せ』から約1年振りとなるニュー・アルバム『ブライニクル』をリリースする柴田 淳。“ブライニクル”とは、南極の海中において触れた生物を死に至らしめることから、“死のつらら”と呼ばれる自然現象のことで、自身の音楽制作中のモードをなぞらえて付けたアルバム・タイトルだという。新たな研究課題も見つかったと語る今作に込めた思いを聞いた。
Photo:小澤正朗 Text:大畑幸子

──前作『私は幸せ』から約1年振りとなる最新作『ブライニクル』ですが、1年というタームでのリリースは久し振りですよね。そこに柴田さんの創作意欲を感じました。



「ふふふ…その答えは簡単! 暇だったの(笑)」

──あははは…ご冗談を(笑)。

「(笑)。だってこの仕事って、音楽制作をやってツアーをやらなければ何も起きないし、第一つまらないじゃないですか。こうやって取材だってないし。そこでふと“私、どうしよう?”と思ったわけですよ。だったら、とりあえず“曲を書こう!”と思い立って、それで今年に入って2月だったかな…自主的に創作を開始して、1か月間、曲作りをしてました」

──ということは、内から溢れてくるものをそのまま楽曲にしていくというやり方で。

「そうです。まずは自分の好きなものを作ってみようと思ったんですね。そしたら、2時間ドラマの…火曜サスペンスとか土曜ワイド劇場のエンドロールで流れるような曲ばかりができちゃって(笑)。改めて私のルーツってココだなって思った時に、だったら思いっきりそっち系でアルバムをまとめてしまうのもありかなと。タイトルも『サスペンス』にして、全曲エンドロールで流れても大丈夫っていう曲を揃えたら潔いかなと。だけど、他にもバラードがあったし、色々バランスも考えて今回はちょっと方向転換したんですよね(笑)。でも、“素直に狙わずにできた曲がこんな感じです”っていうアルバムであることは間違いないんですけど」

──前作の歌詞は絶望とか憎しみを表出していたと思いますが、今回は?



「前作はどちらかというと憎しみが強かったんですよ。今回は…いらつき?(笑)」

──えっ(笑)!?

「全曲じゃないですけど(笑)」

──ええ、そうですね。

「結局、歌詞でその曲の顔ができ上がるじゃないですか。そういう意味で言えば、何か攻撃的なんですよね。私の中でこんなに攻撃的なアルバムって初めてじゃないかな。そういうふうになったのは、思いもよらぬところでアクシデントがあったりしたので。曲作りは早くスタートしていたんですけど、実は制作のスケジュールがうまく回らなくて3か月くらい押してしまったんですよ。待つ時間が長かったから、その間に不安が押し寄せてきたり、ストレスで声が出なくなったりで。いざ始まったら始まったで、時間的なこともあったから、どっぷり制作に浸かってはいるんだけど早く終わらせなきゃ! っていう気持ちも働いて落ち着かなかったんですよね。そんな中で書いているから…」

──確か歌詞を書くのはいつも…。

「歌入れの間に書くんですよ」

──そうでしたね。



「ええ。歌入れ~歌詞書き、歌入れ~歌詞書きっていうふうにノンストップでやるんです。それがだいたい1か月半くらい続いていく感じで。今回もそうだったんですけど、アクシデントやら何やらもあったから、怒りモードになっていたんでしょうね(笑)。やっぱり精神的なものって影響されちゃうから、攻撃的なニュアンスになっちゃったのかも…。だから、もしかすると今までと違って歌詞が分かりづらいかもしれませんね。あ、だからって毎日、怒っていたわけではありませんよ(笑)」

──分かってますよ(笑)。そういえば、創作中は人に会わないんでしたよね?


※続きは月刊Songs2018年11月号をご覧ください。

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