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金井政人

BIGMAMAのメジャー1stアルバム『-11℃』のテーマはずばり躰(からだ)。全12曲が体の部位をモチーフに作られ、作品トータルの完成度を突き詰めた傑作に仕上がった。歌詞や曲調の両面でこれ以上なく振り切った今作について、金井政人に話を聞いた。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:荒金良介

──今作の出来に関して、まずは金井くんの手応えから教えてもらえますか?



「今作がどういう作品かというと、広く浅くならないように、鋭角に何かを突き破っていける作品にしたいなと。色んな音楽があって、色んなアーティストがいるけど、“その中で武器は何ですか?”と聞かれた時に、“バイオリニストがいるロックバンドです!”という部分を迷いなく伝えることが今作はできたと思います。飽きずに消耗もなく作品を作り続けることは難しいし、そこで世の中にこれが自分達の作品ですと言い続けて、人々を魅了し続けることも難しいですからね。好きなことをやり続けてきたけど、改めてここで基準点になるような作品を作りたくて。原点回帰と言われることもあるけど、そういうつもりはないんですけどね」

──あぁ、なるほど。



「全方向になりつつあったものを一度筋道を立てて、ちゃんと真ん中を歩こうと。そういう意味では腹をくくった1枚ですね。年相応にカッコいいことだけをちゃんとやろうと。それが現時点での自己採点です」

──バンドの道筋=バイオリンがいるロックバンドという個性を明確にしつつ、よりエッジを研ぎ澄ませた形で表現しようと?

「そうですね。10年後に美しく孤立しているほうを選びたくて。そのためにはどう一線を引けばいいのかを考えた時に、その一線をグリグリと深くするしかないですからね。世の中から見たBIGMAMA像をたまに考えるぐらいで、基本的には5人の内側、そのポテンシャルを最大限に発揮しようと。なので、今回は肉体性を重視しました。ここに来て、自分達らしさを見つめ直すことが誠実ですからね」

──今作は、より自分達の内側になるもので勝負しようと?

「うん、曲を作る時に骨格や体みたいなことを考えたし。その骨って自分達が好きなロックバンドのダイナミズムでもあるし。10年の節目の中でやりたいことをやり切ったところもあるので、ここから先どういうふうに転がっていけばいいのかを考えた時に、雪ダルマ式に音楽ジャンルを膨らませるのは健全ではないなと。音楽家として集約されたもののほうがカッコいいなと。そのほうが自分も迷わないし、聴いている人も悩まなくていいですからね」

──“集約されたもの”と言いながらも、曲的にはバラエティーに富んでいる印象を受けました。また、聴く人によって好きな曲が違ったり、自分も日替わりで好きな曲が変わりそうな作品だなと。

「そう! そこは僕との素敵な誤差ですね。僕は同じ曲を12曲作ろうと思ってたんですよ。同じトーンで12曲を揃えたいと伝えたのは柿沼(広也/G&Vo)、リアド(偉武/Dr)の2人までですからね。自分達が好きだった洋楽のアルバムは同じトーンで統一されたものが多かったから。僕がワントーンでやっても、彼らにアレンジを委ねてますからね。だから、結果的にワントーンではないけど、それは2人のプロデュースで広がった部分なんですよ。不思議かもしれないけど、僕は同じ曲を作ろうと思っていたし、似たパートがあってもいいと思ってました」

──曲同士が多少似ていても全然OKだと?



「はい。曲同士が似ていると、いやがるふしもあるけど、それを恐れないようにしようと。それをうまく乗りこなせば、波を大きくすることができますからね」

──そういう意味ではあまりとらわれずに自由に表現できた?

「そうですね。ただ、作る過程の中で誰かが違うフィルターをかけるから。リアドは同じリズムにならないようにバリエーションを付けたり、柿沼も同じものになりすぎないようにバランスを取ってくれますからね。今までは全方位的にアプローチしていたとするなら、今回はこのライン上にいる人をかっさらおうと。そのほうがロックバンド然としたカッコいい作品ができるかなと」


※続きは月刊Songs2018年12月号をご覧ください。

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