忘れらんねえよ |
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──1stアルバム『忘れらんねえよ』(2012年3月)からの1年7か月の経験が濃密に反映された、素晴らしいアルバムだと思います。
柴田隆浩(以下、柴田)「ありがとうございます。1stの時って、マラソンで言うと“何とかゴールに辿り着いた”っていう感じだったんですよね。疲れた、もう帰りたいっていう。でも今回は、気持ちいいフォームで走り切って、スカッとゴールして、しかも自己最高ベストタイムを更新した感じなんです。手応えは全然違いますね」
梅津拓也(以下、梅津)「もちろん1stにも良い面はあったんですよ。全部自分たちで考えて、色々試して、これしかないっていう答えを見つけて。どちらかというと肉体的に頑張った感じなんですけど、今回は頭も使ったっていう(笑)」
柴田「うん、うん」
梅津「テイクの選び方も変わってきたんですよね。前は上手く演奏できたテイクを選んでいて…」
柴田「“テンポがズレてない”とかね」
梅津「そうそう。今回のレコーディングはプロデューサーの曾田茂一さんのおかげでもあるんですが、生き生きとしたテイクを選んでいて。自分で聴いていても安心できるんですよ」
──演奏自体もかなりレベルアップしていますよね。
柴田「うん、格段に良くなっていると思います。バンドのグルーヴがようやく見つかったというか…。ライブを死ぬほどやりましたからね。死ぬほどやって、死ぬほど人目にさらされて。対バンのライブって、戦いじゃないですか」
梅津「対バン相手の目も気になりますからね。すげえライブをやってるバンドがいたら、“ここでショボいライブは絶対にできない”って思うし。お客さんにも“ショボい”って思われるだろうし、他のバンドになめられたくないという気持ちもあるので」
柴田「自分にとってバンドが一番得意だと思ってやってるのに、そこで劣ってると思われるのは絶対に耐えられないんですよ。存在価値を覆されるようなものなので。“俺たちが勝てるところはどこだ?”って考えて、それを試して。そういうことを繰り返すことで、どんどん筋肉が付いたんじゃないかなって」
酒田耕慈(以下、酒田)「…親とかにも聴かせられるアルバムになりましたね」
柴田「それも分かる(笑)」
酒田「歌詞の内容がどうとかってことじゃなくて、“これが俺らのやってることです”って言えるというか。1stの時は、“こんなもんじゃない”っていう気持ちもあったので」
──サウンドだけじゃなくて、楽曲の幅も広がっていますよね。
柴田「そうですね、メロディーも言葉も変わったと思います。同じタイプのメロディーを作り続けるのはしんどいし、面白くないんですよ。色んなタイプのメロディーが入っていたほうが面白いと思ったし、そっちをやりたかったので。例えば『そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか』みたいなバラードって──今、演奏していて一番楽しいと思える曲なんですけど──今まではなかなかやれなかったんです。この曲も最初にバンドに持っていった時は、“俺らがやる意味ないね”ってボツになったし」
梅津「そうだっけ? 覚えてないな」
柴田「それくらいの印象だったんだよ(笑)。それをやれるようになったのは、バンドの筋肉が付いたってことだと思うし」
梅津「個人的な印象で言うと、柴ちゃんのメロディーは硬派なんですよね。ロックだけどすごくキレイで、でも、芯があってブレないメロディーというか」
柴田「ありがとうございます」
梅津「いや、上から言ってるつもりはなくて。ホントにそう思うし、毎回“さすがですね”って」
酒田「うん」
──本気でグッとくる曲ばかりですからね。例えば1曲目の『バンドワゴン』なんて…。
柴田「いいですよね! 自分でもすごく良い曲だなって思うんですよ。オケを録り終わって、ラフミックスをスタジオで聴いた時に、“ヤバいね”っていう空気になって」
──“高速道路のその先に/でかいステージがある”っていうフレーズは、まさに今の“忘れらんねえよ”そのままですよね。
柴田「ツアー中、梅津がハイエースを運転している時に、梅津と助手席に座っていたスタッフが“スピードに気を付けて”“ゆっくり走ってると眠くなるんですよ”って話をしていて。そのやりとりが、すげえ美しいなって思ったんですよね。そのことがずっと自分の中に残っていて、ある時に『バンドワゴン』のイメージと重なって。あとはもう、バーッと一気に書きました」
酒田「この曲、バンドマン受けがめっちゃいいんですよ」
──“今まで僕らの音楽を見下してきたやつに”という歌詞もありますが、こういう体験、実際にあるんですか?