三浦大知 |
http://avexnet.or.jp/daichi/ |
──2013年の音楽シーンを象徴する、素晴らしいアルバムだと思います。
「はい、良いアルバムができて幸せですね。コンセプトを絞っていたわけではなくて、“とにかく、振り切った曲を集めよう”と思っていたんですけど、想像以上のアルバムになりました」
──フル・アルバムは前作『D.M.』(2011年11月)以来、約2年振り。この2年間で大知くんの環境にも大きな変化があったと思うのですが。
「そうですね。とにかくライブをたくさんやらせてもらって、現場で学ばせてもらうことも多かったです。ロックバンド中心のイベントに出させてもらうのも楽しかったですね。異色な場所というか、自分のことを知らない人の前でパフォーマンスするのが好きなんですよね。どんな盛り上がり方をするのかな? って」
──根底の部分で自信があるんでしょうね。
「自信というよりも、音楽のことを信じているんですよね。音楽はジャンルじゃないし、必ず繋がれると思っているので」
──『The Entertainer』にも、ジャンルの壁を越えた楽曲が揃ってますよね。まずは1曲目の『Can You See Our Flag Wavin’ In The Sky?』。様々なテイストが混ざった、ハイブリッド感覚のダンスチューンですね。
「Nao’ymtさんに“アップチューンをお願いします”っていうザックリしたオーダーをして、自由に作ってもらった曲ですね。Naoさんが作るトラックは、日本、海外を含めて、全部の音楽シーンの1歩、2歩先を行ってるんですよ。このトラックをいただいたのは去年なんですけど、その時から“ヤバい!”って思ったし、その時に流行っていたEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)とは全く違うテイストだったので。今年に入って、ジャスティン・ティンバーレイクの『スーツ・アンド・タイ feat.ジェイ・Z』を聴いた時も、“Naoさんにはこういう世界が見えてたんだな”って感じたんですよ。今はEDMが落ち着いてきて、色んな要素が混ざり合ってきているので」
──これは1曲目しかない、という感じでした?
「曲順については、スタッフの皆さんを交えてアイデアを持ち寄るんですけど、1曲目と最後(同じくNao’ymtが手掛けた『all converge on “the one”』)は全員一致でした。Naoさんの曲は場の空気を変える力があるから、最初か最後がシックリくるんですよね。」
──なるほど。アルバムのリードトラック『I’m On Fire』も、ガツンと盛り上がれるアッパーチューンですね。
「カッコいいの最上級は大爆笑だと思ってるんですよね。この曲はT.Kuraさん、michicoさんに“盛り上がりすぎて爆笑できるような曲をお願いします”って作ってもらったんですけど、まさにそういう曲になりました。レコーディングの時もずっと笑ってました(笑)」
──9月の横浜アリーナ公演でも披露していましたが、ステージでもすごい効果を発揮していて。
「盛り上がってくれましたね。ただ、この曲をパフォーマンスするとすごく疲れるんですよ(笑)。必死というか、全てを出し切る感じなので」
──あの時のライブって、本編はほぼ“踊りっぱなし、歌いっぱなし”の状態だったじゃないですか。全然休むところがないというか。
「ないですね(笑)」
──それでも全く息が上がっていないところがすごいな、と。
「いや、上がってますよ。分からないように頑張ってるだけで、頭が真っ白になることもありますからね。会場によっては、酸素が薄いというか、息が吸いづらい時もあるし」
──『Elevator』も今回のツアーですでにパフォーマンスしていましたよね。
「はい。このアルバムの中では先頭を切ってでき上がった曲なんですよね。最近よく言ってるんですけど、“理屈じゃないところで盛り上がれる曲”っていう感覚をくれたというか。今はライブの定番になっているし、すごく大事な曲ですね」
──アルバムの起点になった曲と言えそうですね。そして『Spellbound』、この曲もめちゃくちゃカッコいいですね!
「この曲、僕も大好きなんですよ。すごくテンポが速いというわけではないんですけど、しっかり引っ張ってくれるグルーヴがあって。サビのリフレインもカッコいいし、“呪文にかかる”というテーマもオシャレで。たぶんこの曲も、ライブで盛り上がると思いますね」
──生音を交えたハイブリッド感も“EDM以降”という感じがあって。
「そうですね。さっきも少し話しましたけど、EDMに関しては去年の段階でやり尽くされた印象もあったんですよね。もちろんシーンとしては残っていくと思いますけど、これからは変わっていくんじゃないかなって。向こう(アメリカ)のトラックメイカーと曲を作った時も、“EDM以外のものを求められると嬉しい”って言ってましたからね」
──なるほど。『Baby Just Time』は大知くんの歌が引き立つナンバー。
「今までになかった、男らしさを出せる曲だと思います。歌の表現に関しても、この2年間のライブを通して、かなり広がってきたと思うんですよ。喉も楽器だから、鳴らせば鳴らすほど音が深くなるっていうところがあって。いくらトレーニングしても、10代の頃には出せなかったと思いますね」
──シングルとしてリリースされた『GO FOR IT』も、このアルバムの中で聴くとすごく新鮮でした。
「いいバランスの曲ですよね。ブラスの生っぽい感じもありつつ、今のメインストリームの風も感じられるっていう」
──トレンドとのバランスって、やっぱり意識してます?
「もちろん僕も考えてますけど、周りにいてくれるトラックメイカーの方々も嗅覚に優れているので、一緒に話をしているうちに自然とそういうバランスが取れてくるんですよね。(流行やトレンドは)大事な要素だとは思いますけど、かといって同じことはやりたくないっていうアマノジャクなところもあって(笑)。そこはトラックメイカーの方々も面白がってくれてますけどね。クリエイターは常に新しいことを求めているので」
──そういうアマノジャクな性格って、子どもの時から?
※続きは月刊Songs12月号をご覧ください。