大橋トリオ |
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──初のベスト・アルバム『大橋トリオ』、じっくり聴かせてもらいました。“スタンダードベスト”(CD1枚組)、“スタンダード&バラードベスト”(CD2枚組)、“デラックスベスト”(スタンダード、バラードにカバーベストを加えたCD3枚組+DVD)という3タイプでのリリースですが、質も量もすさまじいな、と。
「ベストって、普通はある程度の達成感がある中で出すものだと思うんですよ。ヒット曲が並んでる、とか。僕の場合は違っていて、とにかく作りすぎたから“ここで一回締めくくって、今後のことを考え直したい”っていうキッカケだったんです。ただ、わりと色々な曲を作っていたんだなっていうのは感じました。自分としてはワンパターンな部分もあった気がしていたんですけど、まとめてみると“結構バリエーションがあるな”って。そこに関しては、“わりといいな”ってちょっと思いましたけどね(笑)」
──“ワンパターン”っていうのは、自分の得意な曲調ということですか?
「そうですね。手クセだったり、馴染みのあるコード進行だったり。新曲の『世界で一番幸せ者になれ』もそうだし、ここぞって時にアッパーなシャッフルの曲を書く傾向があるんですよ。『Happy Trail』『Bing Bang』もそうですね。それも自分のスタイルというか、しっくり来るものの1つなんでしょうけど」
──そもそも大橋トリオは、ポップスをやるためのプロジェクトなんですよね…?
「そうです。J-POPですね」
──大橋さんが考えるポップスって、どういうものなんですか?
「うーん…。ポップスっていうのは、要は大衆音楽ですよね。世の中の大多数の人が“これは聴けるわ”って思える音楽というか。でも、“自分がやるからには、こうするぜ”っていうこだわりの部分もしっかり入れたいんですよ。それがしっかりできていたのか、やり過ぎていたのか、全然できていないのかは自分では分からないですけど」
──2000年代のJ-POPはR&B、ヒップホップの要素が強かったと思うんですよ。コード進行とかメロディーの良さというよりも。
「そうですね」
──そんな中、大橋トリオの楽曲はまさにスタンダード然としていて。
「僕みたいなアコースティック・アプローチのアーティストも結構いたと思うんですけど、どっちかって言えばインディー系の動きをしている人が多かった気がするんです。そこで僕が(メジャー・レーベルから)リリースしたっていうのは、面白いことだったかもしれないですね」
──曲を作る上でもっとも意識していたのはどこですか? アレンジなのかコード進行なのか…。
「“キャッチーな何か”でしょうね。リフなのか、コードに対するメロディーの置き方なのか、間(ま)の埋め方なのか、とにかくグッとくるポイントがあるっていうのが大事で。そういうものが好きなんですよ。昔は、“この曲の間奏がいい”っていうだけでアルバムを買ったりしていました。逆に言うと、キャッチーな部分が全くない曲が売れているのが謎でしょうがない(笑)」
──なるほど(笑)。
「歌のパワーで強引に持っていったほうが手っ取り早いのかもしれないですけどね。ただ、そこを上手くやりながら、本当に売れている人もいるじゃないですか。例えば、中田ヤスタカさん(CAPSULE)とか。それはすごいなって思いますね」
──まぁ、ポップスにとって歌、ボーカルっていうのは非常に大きいですからね。
「自分の場合は、歌で勝負してもダメだと思うんです。“声がいいね”って言ってもらうこともありますけど、自分のことは分かっているつもりなので。自分がやるべきことはそうじゃないんだろうな、と」
──“バラードベスト”を聴かせてもらうと、とにかく名曲ばかりだし、歌も素晴らしいと思いますが。
「自分の声に合っているんでしょうね、ウィスパー的な歌い方が。そこをホメてもらうことも多いから、“そういうことなんだろうな”って。まぁ、“あなたの歌には気持ちがない”って言うヤツもいるんですけど(笑)。ピアノの弾き語りの時は歌に重きがいくから、自然と良くなっているみたいなんですよ。でも、バンドのアンサンブルの中で歌うと“気持ちが入ってない”って(笑)。たぶん、それは技術的なことなんですけどね。リズムの問題とか…そこは頑張らないといけないところなんだけど」
──ただ、大橋さんは“最初に気持ちがある”というタイプのアーティストではないと思うんですよ。“この思いを歌にしたい”とか“このメッセージを伝えたい”という感じではないですよね?