伊東歌詞太郎 *撮りおろし4ページ |
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──昨年1月にリリースした1stアルバム『一意専心』がオリコンチャート4位を獲得。ニュー・アルバム『二律背反』はさらに注目度を高める中でのリリースとなるわけですが、制作を始める前はどんな作品にしようと思っていたんですか?
「1枚目のアルバムは『一意専心』というタイトルの通り、ただただ一生懸命、精一杯作った作品だったんですね。なので、周りの反響をちゃんと自分の中に落とし込むまでにはかなり時間がかかったんです。そこから少しずつ次のアルバムについて考え始めたのですが、2枚目のアルバムは自分のオリジナル曲を増やしていこうとは思っていましたね」
──結果的には約半分が歌詞太郎さんの作詞・作曲になっていて。曲作りは順調でした?
「去年の7月から10月にかけて、ライブハウスのツアーと路上ライブをやらせてもらったんですが、10月に1週間お休みをもらった時、今まで経験したことがないほどに歌詞とメロディーがブワーッと出てきたんです。“このメロディーにコードを付けておかないと”“今思いついた歌詞を書き留めよう”みたいなことが続いて、全然寝られなくて(笑)。その時に初めて気づいたんですけど、去年の夏にほぼ毎日ライブをやらせてもらったことによって、音楽的なインプットがかなりあったみたいなんですよね。今回のアルバムに入っているオリジナルも、その時期に作ったものが多いんです」
──音楽的なインプットというのは、どんなものだったと思います?
「はっきりとは分からないんですけど、自分の中で気づいたことがあって。実はライブハウスのツアーの終盤に風邪を引いてしまったんですね。無理してライブを続けていたわけですが、当然、満足できる歌は歌えなかったんです。特に路上ライブの時は、体調管理ができなかったことが悔しくて、すごく落ち込んでしまって…。ただ、それでも“歌を歌う”という行為の楽しさは変わらなかったんですよ。出るはずの音が出ない、上手く音程が取れない状態でも“歌が好き”っていうのは変わらないんだなって」
──なるほど。
「もう1つはファンの皆さんの反応ですね。路上ライブのあとは来てくれた方と握手やサインをしてたんですけど、最初は“今日、調子が悪かったですね”とか“全然大したことなかったです”って言われると覚悟してたんです。でも、実際は“今日も良かったです”と言ってくれる方がほとんどだったんですね。気を使ってくれてるのかな? とも思ったんですけど、いただいた手紙に“昨日のライブがすごく良かったから、今日も来ました”と書いてあったりして、これは自分の認識が違っているんだなって気づいて。ボーカリストにとって一番大事なのは、自分自身が歌を感じながらライブをすることなんじゃないか、と。そのことがアルバムに反映されているかどうかは、分からないですけどね」
──今回のアルバムにオリジナル曲が増えたのも、1つの必然なのかもしれないですね。歌詞太郎さん自身の思いが込められた歌詞、歌詞太郎さんから出てきたメロディーを聴きたいというファンの方も多いだろうし。
「オリジナル曲を聴いてもらうのは怖いですけどね。“曲は大したことないね”って言われるのも怖いし…。あと、“伊東歌詞太郎が作った歌が聴きたい”というファンの方だけではなく、誰が聴いても“いい”と言われるような曲を作らなくちゃダメだと思うんですよ。その欲求だけは絶対に忘れちゃいけないですね」