槇原敬之 *撮り下ろし4ページ |
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──現在、「Makihara Noriyuki Concert Tour 2017“Believer”」の真っ最中ですが、手応えはいかがですか?
「今までも一生懸命頑張ってきたつもりだったんですけど、今回、すごく評判が良くて。アルバム(『Believer』)もそうだったのですが、自分からいっぱいコンサートの主旨を話さないとダメ、みたいな感じじゃないんです。色んな人に聞くと、自然に“ああだったね、こうだったね”って話してくださることが多くて。何が直接的に作用してるかは分からないですけど、気分とか気持ちって伝わるもんなんだなぁっていうのは思いましたね」
──というと?
「ライブでもお話しさせていただいているんですけど、今、自分の第3章の幕開けだと思っているんです。その中での一番大きなテーマが、いわゆる精神的なものというよりは、音楽をやっていく人間として“人と協力し合う”ということだったんですね。ずっとソロ・アーティストとしてやってきて、ほとんど1人で作っているんですけど、『Believer』は“今年はこういうことを歌いますよ”っていうものの雛型であって、実を言うとそんなに作り込んではいないんですよ。どちらかというと、もうここでいいやってとこでわざとやめて、あとはバンドメンバーさんと一緒に、“最新のライブで最新のアルバムを作ってる”みたいな感じにしたんです。自分ができないことはそれに長けてる人にお願いするとか、アイデアをもらったりだとか、人と関わっていく感じでモノ作りをやっているので、観てくださった方からも、そういったフレンドリーな反応が返ってきてるのかなって」
──作り込まなかった分、余白があるからファンの皆さんも入りやすかったみたいな?
「そうだと思います。今回、ライブの曲数を少し減らしてるんですよ。これまで曲を詰め込んでたのも、やっぱり自信のなさだったりしたんですよね。キャリアがいくらあっても、これで全部言えないんじゃないかな? この曲をやらなかったらイヤだって思われるんじゃないかな? とか、そういうことを考えていたんですけど、もう何かそういうのも一切なくなったというか。もう大丈夫だなって。…心構えとしてね。もう堂々と、その時の自分を出し切っていけばいいんだっていうのが、今回のアルバムでもライブでもありまして。それで余白が作れたのかもしれないです。繰り返しになりますけど、パツパツにやってないとちょっと自信なさげというか、作ったあとに説明をたくさんしちゃうみたいな感じだったのが、最近はなくなってきたんですよね。だからすごく楽しいんです。40代後半になってやっと(笑)。ゆとりがあるんですよね、今すごく」
──その“ゆとり”とは真逆な気がするんですが、今回ライブのMCでも新しいものを構築していくという意味で“パンク”という言葉を使われていましたよね。
「はい。もともとそんなにコアなファンではないけど、やっぱり僕はパンク・ミュージックも好きですし、おとなしく見えて、自分の中ではいつもレジスタンスではいるので」
──なるほど!
「やっぱり何か文句は言っていたいですよね。音楽で、常に。みんながいいと思うもの、みんなが欲しいものを作るなんてことには全然興味がないんです。やっぱり化学反応じゃないですか、心って。怒らないのは寂しい。僕、昔気質なんでしょうね。昭和の人間というか(笑)」