清水翔太 *撮り下ろし4ページ |
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───ニュー・アルバム『FLY』、素晴らしいです! ヒップホップに接近した前作『PROUD』(2016年3月)のスタイルを継続しつつ、より進化させたアルバムだなと。まずは今の手応えを教えてもらえますか?
「今はすごく満足していますが、制作に入る前はかなり悩んでいたんですよ。前作『PROUD』は自分の中ですごく大きい作品だったんです。それまでの殻を破って好きなことをやれたし、評価も高くて。僕のキャリアの中でも重要なアルバムになったからこそ、次の作品が難しかったんですよね。前作を超えたいという気持ちは常にあるし、『PROUD』の重圧を感じながら、色々と考えてしまって。そういう時期を超えたのは、去年の後半あたりかな。もともと僕はバランスを取るのが得意な人間なんだけど、『PROUD』の時は極端に好きなことをやってたなって改めて気付いたんですよね。だから今回は、『PROUD』の世界観を引き継ぎながら、もっとキャッチーな要素を加えることで、より多くの人に聴いてもらえる作品にしたいと思ったんです」
──ポップスとしての要素を強めるということですか?
「もちろんそれもあります。音楽の響き方って色々あると思うんですけど──泣けるとか、カッコいいとか、勇気づけられるとか──とにかく聴いた瞬間にパッと響くような作品にしたかったんです。それは僕にとってのポップスの定義でもあるんですよね。深く掘り下げなくても、すぐに分かるっていう。このアルバムの制作中は、特にそういう意識が強かったかもしれないですね」
──今のトレンドなども参考にしながら?
「いや、それはあまり考えてなかったかな。もちろん流行っているものは聴くし、洋楽の新しいサウンドを研究したり、自分の楽曲の中で試すことも結構やってきたんですけど、このアルバムはそれほどトレンドに寄ってないと思うんです。『Drippin' feat.IO, YOUNG JUJU』くらいかな? 今の音の雰囲気に近いのは。制作に入ったばかりの頃は“トラップ・ミュージック(アタックの強いリズム、派手なシンセなどで構成される、2010年代ヒップホップのトレンドのひとつ)が中心になるのかな”と思ってたんだけど、1曲目に入ってる『Sorry Not Sorry』をキッカケにして、もっとクラシックなヒップホップ、R&Bの要素が増えてきて。でき上がったアルバムを聴いても、クラシックな音作りが軸になっていると思いますね」
──しかも音数がすごく少ないですよね。必要最小限の音で構築されているし、アレンジのセンスの良さを感じます。
「確かに音数は少ないですね。『夢がさめないように』『いつもBlue』あたりもそうだし。シンプルでカッコいい曲が一番だと思うし、音数を増やすのは好きじゃないんですよ、もともと」
──今のJ-POPは情報量を詰め込んだ楽曲が多いから、余計に際立ちますよね。
「前作も今回のアルバムもJ-POPからはだいぶ離れてますからね。サウンドはほとんど1人で作っているし、ストリングスやギターなどを加えるのではなくて、自分のスタジオでどれだけクオリティーを上げられるかを考えているので」