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1983年4月に“杉山清貴&オメガトライブ”としてデビューし、1986年からはソロとして活動を続けてきた杉山清貴。優しさと力強さを兼ね備えたハリのあるボーカルはデビューから30年以上経った今も全く色褪せることなく、確かな存在感を放ち続けている。今回は長年のセルフプロデュースという制作スタイルから一転、“歌い手に徹した”という最新アルバム『Driving Music』についてうかがうとともに、“ボーカリスト・杉山清貴”としての魅力と軌跡にスポットを当てた。
Photo:moco.(誌面掲載写真) Text:山田邦子

──今回は“ボーカリスト・杉山清貴”としてのお話をうかがっていきたいのですが、まずは7月にリリースされたアルバム『Driving Music』について聞かせてください。すでにお聴きになった方達からは、ちょっと面白い反応が返ってきてるそうですね。

「ずっと“海! 海!”ばっかりだったので、“やっと帰ってきた”って思われた方が多かったみたいです(笑)」

──(笑)。杉山さんといえば“夏”とか“海”というイメージが強いですし、今回も海から離れたわけではないですが、立ち位置が違うというか。

「そうですね。以前はリゾートとしての海を“眺めながら”歌ってまた街に帰っていたけど、自分がサーフィンを始めたことで、方向性というか意識が、もうずっと“海の中”だったんですよ。“海ってこんなにいろんな顔があるんだ”って気付いたらみんなにも教えたくなって、どんどんそういう作品が多くなっていったんです。そして、いかにサーファーが好きそうなアルバムを作るかってことばかりに意識がいってた。ハワイにも住みましたしね。でも、いいとか悪いって意味ではなく“何か違う”“これも違うな”っていうのがずっと続いていたんですよ。そうやって去年ソロ30周年を迎えたんですが、前作の『OCEAN』というアルバムを作って、完成した音源を家で聴き終えた時にスッと腑に落ちたんです。“あぁ、俺はこういうアルバムを作りたかったんだ”って。時間もない中でバタバタと作った作品だったけど、“眺める”んじゃなくて“入って”みて感じた海は作り終えたなと思えたんですよね。完全に、ニュートラルな状態になったんです」

──そこまで納得のいくものが作れたら、次の作品をどうするのかが逆に難しくなりそうですよね。具体的にはどんなふうに取り掛かったんですか?

「キッカケは、(今年5月にリリースされた)南 佳孝さんとのアルバム『Nostalgia』でした。そのアルバムには住友(紀人)さんというプロデューサーがいて、彼が全てを仕切ってくれたんです。ソロになってからはほぼセルフプロデュースで自分のやりたい音楽を作って歌ってきたんですが、自分の中から出すものは『OCEAN』で全部出し切っていたし、住友さんと一緒に仕事をして“こういう作り方だったらできるかもしれないな”というひらめきもあったので、プロデューサーを立ててみることにしたんです。今回紹介していただいたMartin Naganoさんは佳孝さんのアルバムなども手掛けている方で、たまたま僕と年も同じ。“やっぱり僕らの世代はAORだよね”という感じで今回のアルバムの話が始まり、いろんな作家の曲を集めてもらいました」

──アルバムタイトル『Driving Music』からも、世代的なムードが伝わってきますよね。

「昔って、みんな車で音楽を聴いてたじゃないですか。僕もそうだけど、若い頃はみんなアパートとかに住んでいて、そこじゃ大きな音で聴けないからカセットテープに録音して車の中で聴いてた。僕も横浜港とかに車を停めて、海を眺めながら爆音で好きな音楽を聴いたりしてました。そういう世代ってたぶん40代とか50代だと思うんですが、きっと今の生活の中で音楽を聴く余裕ってあまりないと思うし、車に乗ってる時も昔の音楽を引っ張り出して聴くことが多いと思うんですね。だったらそれの最新盤を作ったらいいんじゃないかなと思ったんです。それこそオメガトライブが好きだったとか、俺が“海! 海!”ばっかりでちょっと違うなと思ってた人達にも(笑)、“これ聴いてみてよ”って言えるアルバム。ある意味、原点回帰でもあるというか」

※続きは月刊Songs2017年9月号をご覧ください。

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