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映画「月と雷」
『八日目の蝉』や『紙の月』など映画化される作品も多い人気作家・角田光代の『月と雷』が映画化。幼少期に半年間だけ一緒に過ごした泰子(初音映莉子)のもとに、大人になってから突然現れる青年・智を演じるのは、『横道世之介』や『きみはいい子』など圧倒的な存在感と繊細な演技で多くのファンを持つ高良健吾。面倒を見てくれる男性を渡り歩く母親(草刈民代)に連れられ、各地を転々としながら育った智を魅力的に演じた高良に、今作や役について、そして音楽についても語ってもらった。
Photo:松井伴実 Text:奥村百恵

※『月と雷』は15歳以上の方がご覧いただける作品です。
──安藤 尋監督とは以前からご一緒してみたかったそうですね。



「10代の頃に安藤さんの作品に参加する予定があったんですけど、結局その企画はなくなってしまったんです。それ以降も安藤さんの作品は好きで拝見していました。今回ようやくご一緒できてすごく嬉しかったです」

──安藤監督の作品のどんなところに魅力を感じますか?

「今作にも言えることですが、人物の切り取り方がすごく好きです。安藤さんとカメラマンの鈴木一博さんが作り出す独特な世界観にも惹かれますし、劇中での時間の流れ方も好きなので、そういうところに魅力を感じます」

──念願の安藤組はいかがでしたか?

「俳優部が考えてきたことを尊重してくださいますし、俳優部がやったことを正解と思ってくださる現場でした。ただ、それはある意味厳しいことでもあるんですよね。安藤さんが現場で“そこは俳優部のほうが分かってるよ”とか、“それは俳優部の仕事だよ”とおっしゃっていて、そういう言葉は嬉しかったんですけど、同時に厳しい言葉でもあるなと思いました」

──キャストの皆さんを信頼してるからこその言葉ですよね。

「智を演じるにあたって何が必要か、何がしたいのかを最初からやってみせることができたのは楽しかったです。まさに“演じるのが俳優の仕事”という感じの現場だったので、安藤さんと役について何か話し合うといったこともなかったように思います」

──智は掴みどころがない部分もありますが、すごく優しくて、女性から見てとても魅力的な男性でした。どんなことを意識して演じられたのでしょうか?

「掴みどころのない部分を活かすように演じたかったので、具体的にどんなふうに表現したらいいのか色々と考えました。智は幼い頃に母親が突然消えてしまうような環境で転々としながら生きてきた人なので、台本や原作を読んだ時に“寂しそうな奴だ”という印象も受けました。そういう経験をしてきたからこそ、青年になってああいう感じになったんだと思います。でも、トラウマを抱えて生きてきたわりには素直でいい奴に育ってますけどね(笑)」

──それは母親である直子さんとの関係性が良かったからだと思いますか?



「というよりも、自分のことを“離さないでほしい”という気持ちが強かったんじゃないかなと思います。智は寂しさを感じながら生きてきたから、自分は人に対して寂しい思いをさせたくない、でももしかしたら母親のようにいきなり誰かを寂しくさせることもあるかもしれない。そんな不安な気持ちを常に抱えていたんじゃないかなと。僕は正直彼に100%共感できたわけじゃないんですけど、そういう性格になってしまったのは何となく分かります」

──直子を演じた草刈民代さんと共演してみていかがでしたか?

「草刈さんは長年この世界で活躍し続けてらっしゃるので、そういう方とお芝居ができたことはすごく良い経験になりました。お芝居以外でも“普段はどういうことをしてるの?”と話しかけてくださったりして、草刈さんと色んなお話ができて楽しかったです。草刈さんだけじゃなく、泰子を演じた初音映莉子さんも素敵な女優さんでした」

──直子と泰子はどちらも少しだけ癖がありますが、観終わったあとに大好きになってしまうキャラクターでした。高良さんはそんな2人のことをどんなふうに受け止めて演じてらっしゃいましたか?



※続きは月刊Songs2017年10月号をご覧ください。

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