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昨年末に結成から5年間の活動をまとめたベスト・アルバム『軌跡 BEST COLLECTION+』をリリースした和楽器バンド。オリジナルとしては、前作『四季彩 -shikisai-』から約1年振りとなる通算5枚目のアルバム『オトノエ』は、日本の伝統芸能である和楽器や詩吟と西洋文化発祥の軽音楽器の融合からさらに一歩踏み出した、冒険的かつコンセプチュアルなアートでポップな作品となっている。和洋折衷を果たしたその先に生まれた独創的でクリエイティブな楽曲制作に挑んだ8人のメンバーが本誌初登場。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:永堀アツオ

──約1年振りのアルバムが完成しました。



亜沙「これまでの5年間で培ってきた土台をもとに、これからの可能性を考えた、非常にバランスのいいアルバムになったと思います。和楽器好きの方でもバンド好きの方でも楽しめるし、誰でも覚えられるようなシンプルなメロディーのいい曲も多いので、気軽な気持ちで手に取って聴いていただけたらと思います」

蜷川べに(以下、蜷川)「前作のベスト・アルバムが私達の名刺代わりで、今作は私達が冒険した、コンセプト・アルバムになっていて。今までにないアレンジにも挑戦しているので、じっくりと何度も聴いていただいて愛されるアルバムになればいいなと思っています」

──どんなコンセプトを掲げてましたか?

町屋「テーマはミュージアムですね。目を閉じて絵が浮かぶ、展覧会のようなアルバムになったかなと思ってます」

鈴華ゆう子(以下、鈴華)「音を聴いて絵画が浮かび上がるようなものをイメージして、『オトノエ』と名付けていて。私は幼い頃から音楽大学でピアノを通してクラシックを学んでいて、特に好きなのが印象派の時代なんですね。印象派にインスピレーションを受けたっていう感覚をメンバーに話したことがあって、それを和楽器バンドに落とし込んで表現するとどうなるかっていうところで、ミュージアムっていうテーマが浮かび上がってきたんです」

いぶくろ聖志(以下、いぶくろ)「和楽器は音楽に縛られずに自然の音に近い表現ができる楽器でもあるから」

鈴華「印象派の画家が光や風を表現したように、和楽器もそういう表現ができる楽器なんですよ。その上で、今回はオーケストラとのコラボレーションにも挑戦していて」

──リード曲『細雪』にはオーケストラが入ってますね。

町屋「今できる和楽器バンドの足し算と引き算をけっこう詰め込みました。楽曲が良くなるためだったらメンバーにはない楽器も取り入れても全然いいと思ってるので、今回はこの曲で初めてオーケストラとのコラボレーションをやったんですね。それで表現がより豊かになったというところもありますし、歌詞からも日本の美しい言葉が感じ取れるような言葉選びをしていて。曲自体はシンプルな進行なんですが、Dメロの1行だけ、話し言葉にしてるんです。話し言葉を使うことによって距離感を縮めて、ぐっと引き込もうとしてみたり、転調したDメロの終わりから落ちサビに戻る流れも含めて、すごくドラマチックになったと思います。最初から最後まで、美しさと激しさがいい塩梅に作用しあってバランスの取れた楽曲に仕上がったと思います」

──MVは“ミュージアム”というコンセプトが分かる、水墨画のような映像になってますね。

町屋「デジタル枯山水ですよね。我々は日本の文化を発信するという思いでやっている部分もあるので、そのひとつとして、日本の文化はフュージョンすることっていうのがすごく特徴的なところだと思っていて。今回でいうと、テクノロジーとアナログなものの融合。枯山水っていう日本に昔からあるものをデジタルで表現することによって、それが今のモダンな日本の空気感として発信できるっていうところで、今回はこういう見せ方で作りましたね」

鈴華「実は仕掛けがもう1個あって、2ndアルバムの『八奏絵巻』の中の町屋が作った曲で、ファンの方がアンコールの時に歌ってくれる『暁ノ糸』っていう曲があるんですね。そのフレーズが実はこの『細雪』のDメロのサビにいく前の展開でワンフレーズ入っていて。この5年間の活動を通してきて、この曲がリード曲になってベストの次にこの曲を聴いた時に、今まで応援してくれたファンの方にも何か心が通じ合うようなドラマチックさが入っているのも素敵だなって思ってますね」


※続きは月刊Songs2018年5月号をご覧ください。

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