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昨年デビュー5周年を迎えた家入レオ。日本武道館での公演を成功させ、テレビドラマや朗読劇にも出演するなど、精力的な表現活動が続いている。そんな彼女が、自身14枚目となるシングル『もし君を許せたら』をリリース。フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』の主題歌である表題曲についてはもちろん、水野良樹(いきものがかり)と作り上げた『あおぞら』などカップリング曲に込めた思いについても聞いた
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:山田邦子

──今回の新曲『もし君を許せたら』は、ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』の主題歌。作詞は杉山勝彦さんですが、これまでにも13thシングル『ずっと、ふたりで』などを手掛けていらっしゃいますね。



「杉山さんに書いていただくのは3回目になります。初期の頃は“外側から見た家入レオはこういう人です、じゃあこういうものを歌ったら面白いのでは”というご提案をいただいた曲だったんですが、出会ってから時が経ち、色んな話もしてきたので、今回は私の内側をより分かってくださった中で書いていただいた歌詞になっています。私も台本と脚本を読み、自分はこれからこういう音楽をやっていきたいというような話し合いもしながらだったんですが、すごくいい作品作りができたっていう自信があります」

──人間の根本的な部分に向き合うようなドラマでもあるかなと思うのですが、歌詞の部分でどう切り込んでいくのか、とても興味がありました。

「デビュー当初もそうでしたが、これからもっと自分発信を強くしていかなければいけないと思っているし、(今回のように楽曲を)自分で作らない時ほど、自分の歌いたい形というものが大事だなと思っていて。ドラマで使っていただく曲なのでその画にはまらなくちゃいけないけど、(ドラマの主題歌という)大きなチャンスだからこそ、全部それに染まってしまうと、結局私のことを知ってもらえなくなるんじゃないかという不安もあって」



──家入レオはこういう歌を歌う人だっていう、ある一面だけを強く印象付けてしまう可能性がありますからね。

「自分のやりたいことがはっきりしているからこそ、今回はその割合を見極めるのがとても難しいなと思いました。でも台本と脚本を読んでいくと、自分の根本として持っている、ちょっとダークな要素と結びつくものがあったんです。正義とか正しさを理解しながらも、やっぱり人間の中には処理しきれない矛盾みたいなものがあって、それを殺人事件や上司との関係性などを通して描いていく。そういうところを捉えていけたらいいなと思って、杉山さんには何度も歌詞を書き直していただいたんです」

──例えばどういうやり取りがあったんですか?

「杉山さんは、難しい言葉を使っていないのに人の心にとても残るフレーズを書ける方だからこそ、正直に向き合おうと思いました。例えばこの言葉はすごく素敵だけど、私の人生の中で当てはまるシチュエーションがない。だから思いを持って歌うことができないです。こういう言葉の響きは、私の中では美しいとは思えないんですっていうふうに。そうやって細かく、何回も何回も向き合ってくださったので、自分で作ってはいないけど、ひとつひとつの言葉に私の思いがあるんです。そこにドラマの画もはまっていて、今回はすごく時間もエネルギーも使ったけど、すごく良かったなと思いました」

──そういう過程を経て完成した歌詞を歌うにあたってはいかがでしたか? 先ほど人間の矛盾という言葉もありましたが、“どうして 憎むほどに 愛してることに気づくの?”という歌詞がとても印象に残りました。



「広い曲にしたいというのがあって。恋人達が聴いても、家族が聴いても、職場で悩んでる人が聴いても、ジャンルこそ分かれていても、そこで生まれるのって人間関係の悩みじゃないですか。誰かに対して強い思いを持つからこそ、強い美しさと強い憎しみも生まれる。一番絶望するのは、これだけその人に人生をかき回されてるのに、その人は自分のことについて何ひとつ思ってなかったっていう瞬間だと思うんです。突き落とされるような感覚になる。その境地まで行くと、人って“無”になるんだなっていうのがすごく分かったんですよ。今って、例えばYouTubeなどを使って、自分の考えとか作品をどんどん発表できる世の中になっているじゃないですか。表現することが世界に溢れている。だったらもう表現しないことも表現なんじゃないかってところに辿り着いて、今回、私“無”で歌ったんです。人生を諦める瞬間って1人の人間の中に何億何千とあると思っていて、だけどどこかでまだ期待してしまうしっていう…。これは“人生”を歌った曲だって私はすごく思ってます」

──人生、ですか。

「そう。暗いんだけど、最後“生きてくんだろう?”の部分なんかは、最後の最後でちょっとだけ明るいFのコードに変えてあったりするんですよ。そういうひとつひとつにも意味があります」

──“もし君を 許せたら 僕は僕を 許せるかな?”という言葉も、深く考えさせられました。

「ここは、自分からこう書いてほしいんですとお願いをしました。最初の部分を受けて。誰かにすがってしまう自分のことを、この主人公は絶対許せてないから。たぶん相手を愛することで、自分を愛してる人。誰かを許すことで自分を許すって、難しいんですけどね


※続きは月刊Songs2018年8月号をご覧ください。

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