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メジャー・デビューEP『毎秒、君に恋してる』のリリースからちょうど1年。松室政哉の1stアルバム『シティ・ライツ』が完成した。敬愛するチャールズ・チャップリンの名作『City Lights』(邦題『街の灯』)にインスパイアされたという本作について彼は、「街に明かりが灯るということは、そこで生活している人がいる。恋をしていたり、仕事で葛藤していたり、様々なドラマがあるはず。そういう、街に息衝く人々の群像劇を描きたかった」と語ってくれた。本作にも収録されている最新曲『海月』が“平成最後の泣き歌”として話題になっているが、このアルバムもまた、“平成最後の名盤”として人々の心に刻まれていくはずだ。
Photo:竹中圭樹(D-CORD) Text:山田邦子

──1stアルバム『シティ・ライツ』が完成しました。メジャー・デビューEP『毎秒、君に恋してる』からちょうど1年ですが、待っていて本当に良かったなと思えるアルバムでした。



「デビュー前から取材していただいてるので、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。制作期間中は、スキマスイッチのツアーをオープニングアクトして一緒に回ったりしてたので、スケジュール的に大変なところもありましたが、何と言っても初めてのアルバムですからね。(既発曲以外は)ほとんどが今年に入ってから書いた曲なんですが、楽しみながらレコーディングできましたし、今やれるものは全部出せたかなと思います」

──アルバムの全体像はどんなふうに作り上げたんですか?

「デビュー作の『毎秒、君に恋してる』、次の『きっと愛は不公平』、配信の『衝動のファンファーレ』、そして最新曲の『海月』を入れることは決まってたんですが、この4曲って、それぞれ違う人を歌ってるんですね。恋をした瞬間とか、逆に捨てられた男とか、青春を駆け抜けてる青年達とか。僕はこの4つが群像劇っぽく見えたので、その世界観をアルバムでもっと広げてみようと思いました。そこから、“様々な人々が生きるこの世界の群像劇”っていうアルバムのテーマにも繋がっていったんです」

──群像劇という言葉について、もう少しお話ししていただけますか?

「僕は映画が好きなんですが、映画でいうと、例えばどこかのホテルとか、空港とか、街の中とか、同じ時間軸の中で色んな人の色んなドラマが進んでいって、最後にそれらが交差していくっていう群像劇が好きなんです。そういう世界観を、音楽で、アルバムでやりたいなって思ったんですよね。今回のアルバムには色んな人が出てきますし、シチュエーションも様々。広がりを持たせるために、時間帯や場所なんかも結構考えながら作っていきました」

──歌詞を書いていく上で、何か意識したようなことはありましたか?



「僕はいつも、哀愁みたいなところに惹かれるんです。人のおかしさとか切なさとか、そういうのはどこかに入れたいなと思ってました。でもそれだけで終わらせると悲しいだけになっちゃうので、100%ではないですが、曲が終わる頃にはうっすら光を当てたいなというのは考えたことかもしれないです。アルバムのタイトルにした『シティ・ライツ』という言葉は、僕の大好きなチャップリンの名作『街の灯』の原題でもあるんですね。『街の灯』自体は群像劇ではないですが、チャップリンの映画はどれも哀愁なんですよ。コメディーなんだけど、終始切ない。哀愁があるからこそ何かおもろいとか、何か泣けるとか、僕はそういうのがもともと好きだし、それは自分の中にずっとあるテーマみたいなものなのかもしれないと思います」

──では曲が完成するまでの過程で、何か印象に残っているものがあったら聞かせてください。

「今年の2月に出した『きっと愛は不公平』のMVの監督をさせていただいたんですが、出演してくれた俳優の長村航希くんの演技が素晴らしかったんですよ。現場で見ていて、泣くくらい(笑)。曲だけ作った時は思ってなかったけど、航希くんのその役を見た時に、どうしてもこの主人公を大丈夫にしてあげたいなと思ったんです。曲の中では大丈夫じゃないまま終わるから。その思いで作ったのが『Fade out』でした。そんなふうに曲を作るなんて発想は今までなかったので、すごく面白かったですね」


※続きは月刊Songs2018年11月号をご覧ください。

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